<歌姫・囚> サンプル文章 | |
第一話 「ゲームの開始」 | |
「ようこそ、ラ○ス様。わが軍は貴殿の来訪を歓迎しますぞ。」 地球連合軍の高官らしき男が、わざとらしく慇懃な態度をとりながら言葉を発した。 ここは、地球連合軍の基地内にある尋問室兼独房である。 両手を後ろ手に拘束されたラ○ス・クラインが椅子に座り、その彼女を尋問用のライトが煌々と照らし出している。 他に部屋にいるのは、数名の地球連合軍の高官らしき人物たちで、今まさに尋問を開始したところであった。 敵軍の真っ只中で、ただ一人で尋問を受けようとするラ○ス。しかし、ラ○スは、そのような状況下にあっても落ち着き払い、凛とした態度で連合軍の高官たちと対峙していた。 先程、男は「来訪」という言葉を使ったが、実際は、強制的に連行されて来たに過ぎない。 数時間前の地球連合軍との戦闘で、ラ○スが艦長を務める戦艦エターナルは轟沈。 ザフト軍との戦闘で疲弊していたところに攻撃を受け、反撃もままならない状況であった。 そして、エターナルの轟沈時に、ラ○スは間一髪、脱出ポッドで脱出したが、地球連合軍に鹵獲され捕虜となったのであった。 「他の方々は無事なのですか?」 一緒に鹵獲された兵士たちのことを気遣うラ○ス。 ラ○スと共に捕虜となった兵士たちの中には負傷している者もおり、また、基地に到着するとすぐに引き離され、全くコンタクトが取れない状況であった。 「大丈夫。問題ありませんよ。負傷している者は医療チームが治療にあたっておりますし、他の兵たちも皆、元気ですよ。」 先ほどの高官が答えた。 この男の名は、ガダル。恰幅の良い体形で口ひげを生やし、頭は禿げあがっている。年の頃は50代で老獪といった印象を与える。 彼はこの基地の司令官であり、階級は少将。先のエターナルとの戦闘で指揮を執ったのもこの男であった。 「そうですか。感謝いたしますわ。」 安堵の表情を浮かべながら答えるラ○ス。 「いやぁ、私は、前からラ○ス様のファンでしてな。非の打ちどころのない美しさに、その身から溢れ出る気品。今までは映像で見るだけでしたが、生で見ると、さらにお美しい。」 ラ○スの全身を嘗め回すように見つめながら、ガダルは言った。言葉は丁寧であるが、どこか見下す態度が見られる。 さらにガダルは続けた。 「しかし、その格好はある意味、凶器ですな。そんな短い丈で生足をさらけ出して、まるで犯してくれと言わんばかりではないですか。」 淫猥な笑みを浮かべ、ラ○スの太ももを凝視しながらガダルは言った。 表情が一瞬、強張るラ○ス。 さらに、ガダルは続けて言った。 「ねぇ、ラ○ス様。私はラ○ス様のファンで、ずっとラ○ス様のことを見て来ました。 あなた、実は、淫乱で変態の本性を隠しているでしょう?」 「なっ・・・失礼なことを言わないで下さい!」 不意に失礼極まりない言葉を投げかけられ、少し声を荒げるラ○ス。 「だってそうでしょう。艦長服がこんな劣情を誘うような服装というのはおかしいでしょう? 何故、こんな短いのを履いてるんです? 重力のない宇宙空間じゃパンツ見てくれって言ってるようなもんですよ。そう言えば、前戦役の艦長服も同様でしたな。 パンツを見せることで兵士たちの信望を集め、そして、自分はチラ見してくる兵士たちを見て欲情してたんじゃないですかな?」 「ち、違います!」 少し顔を紅潮させ、ラ○スは否定した。 「ふっふっふっふ。まあ、『私は露出癖のある変態女です』なんて言えないでしょうからなぁ。」 「・・・・・」 「もしかして、わざと捕虜になって、敵兵に犯されることを期待してましたのかな? そうとでも考えないと、そんな挑発的な恰好で戦争をしてることに説明がつきませんからな。 ラ○ス様、あなたは、その聖人ぶった仮面の下で、淫猥な願望を隠している変態女でしょう?」 「こ、これ以上の侮辱は許しませんわ!!」 声を荒げるラ○ス。 「ふっふっふ。あくまで否定なさると。 もし、素直に答えて下されば、あなたの秘められた凌辱願望を叶えて差し上げるのですがねぇ。。。」 ガダルをキッとにらみつけるラ○ス。 「まあ、まあ、そうカッカなさらないで下さい、ラ○ス様。我々は紳士ですから、あなたが望まないのであれば別に無理やり犯そうなどとは考えておりませんしね。 しかし、これだけ状況証拠を提示しながら、あくまで否定されるというのも面白くありませんなぁ。 そうだ、ラ○ス様、あなたが嘘をついているか否か、ゲームをして試してみませんかな?」 ガダルがラ○スの目をまっすぐ見据え、わざとらしく本題を切り出した。 「ゲ、ゲーム?」 突然の提案に怪訝そうな顔をするラ○ス。 「そうです。ゲームです。ラ○ス様が変態か、そうでないかを確かめる為のゲームです。」 「な、なんなのですか、それは!?」 理解不能なゲームの提案にラ○スは眉をしかめた。 「なあに、簡単なゲームですよ。 ラ○ス様。これからあなたに5日間、時間を与えます。この5日間で、あなたが『私は凌辱願望を持った淫乱で変態な女です』と言わなかったら、ラ○ス様の勝ち。他の兵士ともども、安全な場所まで移送した後、解放しましょう。 そして、もし、ラ○ス様がそう言ったら、私の勝ち。ラ○ス様の願望を叶える為に当基地で調教して差し上げましょう。他の兵士たちは、そうですな。移送するのも手間なので、処刑してしまいましょう。」 「・・・・・・」 ガダルの顔を見つめ、そのゲームの真意を探ろうとするラ○ス。 内容のおかしい賭けであり、しかも、簡単に勝てるゲームであった。 「ただし、これじゃ、あまりにラ○ス様に有利ですからな。ラ○ス様には5日間毎日、このクスリを一本ずつ摂取してもらいましょう。」 ガダルは、そばにいた者からピンク色の液体が入った注射器を受け取り、それをラ○スに見せた。 「ク、クスリですか?」 いぶかしそうな顔をし、問いただすラ○ス。 「なあに、心配いりません。単に素直になるだけのクスリですよ。 素直になってもらわないと、ラ○ス様の本心を聞くことができませんし、偽りの本性のままゲームに勝たれてもつまりませんしな。 まぁ、身体に害があるわけでも常習性があるわけでもありませんし、本心のまま生きているのであれば、何も変わりませんよ。」 「素直になるクスリ・・・ですか?」 さらに問いただすラ○ス。 「そうです。強いて言えば、自白剤に近いですかな。言った通り、素直になるだけのクスリで、ウソをつけなくなるだけですよ。精神にも身体にも害は及びません。」 如何にも怪しげなクスリで、ガダルの言うことが全て本当だとは思えない。 「もし、このクスリを拒否すれば?」 ニコニコと薄っぺらな笑顔を見せながら、ガダルは答えた。 「他の兵たちは銃殺にして、ラ○ス様だけ解放しましょう。 ま、自分の身が可愛いければ、ゲームに参加しなくてもいいのですよ。」 「・・・・・・」 黙って少し考え込むラ○ス。 「ん? 捕虜取扱条項もあるし、まさか、本当に殺したりしないとでも思ってらっしゃるのですかな?」 ガダルがラ○スの思考を読み取ってそう言い、後ろを振り返って他の者たちに言った。 「おい、重傷だった捕虜を連れて来い! アイツなら、死んだところで後でどうとでもなる!」 「ま、待って下さい!」 必死に引き留めに入るラ○ス。 「わ、分かりました・・・約束は必ず守って下さるのですよね。」 実質、ゲームに参加しないという選択肢が用意されていないことを悟ったラ○スは、約束の遵守を確かめた。所詮、口約束に過ぎないが、せめてもの確認であった。 「もちろんですよ。ラ○ス様。」 目を細め、偽善的な笑顔を見せながらガダルは答えた。 「分かりました。その条件でゲームをしましょう。」 凛とした態度で承諾するラ○ス。 このゲームに参加せざるを得ないように仕組まれていること、また、このクスリが何か危険なものであることも分かっていた。 しかし、ゲームに参加することで、仲間の兵ともども助かる可能性があることも確かであった。 (己の意志を強く保ってさえいれば、どのようなクスリであろうとも・・・) そう考えて可能性にかけることにしたのだ。そもそも、ラ○スに選択の自由はなかったのだが、5日間という短期間もラ○スの不安を少しは取り除いてくれた。 (よーし、乗ってきた、乗ってきたぞぉ!) そう思いながら、笑いを必死で押さえこみ、冷静さを装うガダル。 「それでは、今からゲーム開始ということで。さっそく、今日の分のクスリを打たせてもらいますよ。」 素直に応じ、自分の左腕にクスリが注入されるのを不安げに見守るラ○ス。 「それじゃ、ラ○ス様、今日から5日間、ゲームを楽しみましょう。 ラ○ス様がその本性を我々の前にさらけ出して下さることを願っていますよ。わっはっはっは!」 そう言い残し、ガダル達は尋問室から出て行った。 |