NOVEL


〜 廃品皇女 〜
第一話 「ある晴れた日に」


 その出来事が起こったのは、新緑がまぶしい春の穏やかな日のことであった。

 温かな日差しの穏やかさを破るかの如く、突如、街の一角にできた人だかり。

 しかし、その人だかりは異常な雰囲気をたたえていた。人々は声を発せず、ただ、その人垣の中心を固唾を呑んで見つめているのである。

 その異常さの理由は、人々が見つめる先を視認することができれば容易に理解できたであろう。あまりに衝撃的な光景がそこにはあったからである。


 人々の視線の先にあるもの、それは、ブリタニア帝国の第三皇女ユーフェミアであった。いや、正確には「ユーフェミアであると思える女性」と言った方が良いかも知れない。誰かがそうであると確認したわけではないし、単に似ているだけかも知れないからだ。

 しかし、仮にその女性がユーフェミア本人だとしても、人々が声を発するのを忘れるほどにはなりえない。その風貌と言動があまりにも異常で、衝撃的なものであったのである。

 彼女は服はおろか下着さえ身に着けていない。つまり、裸。

 そして、その、何の恥じらいもなく人々の目の前にさらけ出された柔肌には、殴打や鞭打ちらしい跡が痛々しく体中に広がっていた。

 それだけでも充分に異常な光景に違いない。しかし、それだけではなかった。

 その女性は涎を垂らしながら、しどけない笑みを浮かべ、左手の指で陰部を開いて膣口を人々の前にさらけ出し、そして、右手の指をアナルに突き入れて自慰行為をしているのである。

 さらに、彼女の口から発せられる言葉も異常なものであった。

 「くすくす・・・。私、不燃ゴミですの〜。
 要らなくなったから捨てられたんですの〜。あはは、あはっ。

 どなたか廃品の私をリサイクルしませんかぁ〜?
 まだ、使えますよ〜。

 誰かに拾ってもらわないと、不燃ゴミは廃棄されちゃうんですぅ〜。
 くす、くす・・」


 自らがゴミであることを主張し、誰かに自分を拾ってくれるように懇願しているのであった。


 目の前に広がる、あまりにも常軌を逸した光景に、人々が言葉を忘れるのも無理からぬことであった。

 誰もこの女性がユーフェミア本人であるかは分からない。ただ、見た目だけで判断するとそうに違いないだろうと思うだけである。

 しかし、誰もが、ユーフェミアであると断定することを躊躇した。

 ユーフェミアは支配者側でありながら、属国であるエリア11の為に尽力してくれた女性であり、民衆の人気も高く、愛されていたと言っていい。そのユーフェミアが今、このような状態で人々の前にいることを誰もが認めたくなかったからである。

 この女性が今までどのような仕打ちを受けたかは、現在のその姿から誰もが容易に想像ができた。

 おそらくは、歪んだ性欲のはけ口にされ、想像を絶する程の無慈悲な調教を受けたに違いない。

 彼女の精神は既に破壊され、肉欲のはけ口になる為だけに存在する、従順なただの「肉人形」へと堕としめられていたのであった・・・




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