〜 家畜になったお姫様 〜 | |
第一話 「親孝行な男」 カルナ姫は一人、森をさまよっていました。 その日、王家主催の狩り大会が催されたのですが、追い回され狩られる動物たちの痛ましい姿に耐えかねてこっそり抜け出したのです。 普段は侍女たちにかしずかれ、めったに一人きりになることなどありません。久々に味わう一人きりの気楽さ。 美しい花々や可愛らしい小動物など、自然がおりなす様々な風景に夢中になって楽しんでいる内に少し遠くまで来てしまっていたようでした。もう、狩りの声も聞こえてきません。 「狩場はどちらかしら・・・」 カルナ姫が不安に思い始めた時、突如、目の前に男が現れました。 「カルナ姫様でねぇですか?」 男は声をかけるなり、カルナ姫の前で土下座をしました。 「そ、そうですが・・・」 カルナ姫は嫌悪感を感じました。 その男は薄汚れた格好をしており、それにも増して、目をそむけたくなるような醜い顔をしていたのです。 おでこが異様に大きく、そして、、髪は薄くて、頭頂部ははげて地肌が見えています。また、両目はいやらしく垂れ、歯はまばら。さらに、顔中にデキモノが吹き出ています。 こんな男が突然現れれば誰でもムッとします。 「おお、やっぱりカルナ姫様で!ああ、ありがたやぁ。ここでお会いできたのも全て神様のお導きですだぁ。」 「は、はぁ・・・」 「いやぁ、実は、オラのおっかぁが病いにかかっちまいまして。。。 それからというもの、えらく気弱になっちまって二言目には『あたしゃ、もう死ぬんだから』ですだ。」 「そ、そうですか・・・」 カルナ姫は、少しでも早くこの男のそばから離れたい気持ちでいっぱいでした。しかし、その男は、そんなカルナ姫の気持ちなど全く気にかけることもなく、しゃべり続けました。 「『病は気から』って良く言うから、オラ、『そんな気弱なことじゃダメだ』っていつも励ましとるんですが、オラの言うことなんかちっとも聞かねえんですだよ。」 「は、はぁ・・・」 「おっかあはカルナ姫様の大ファンで、いつも『あの方は天使様の生まれ変わりに違いねえ』って言っとりますんで、きっと、カルナ姫様の言うことなら聞くと思うんですだ。ぜひ、一言でいいですから、声を掛けてやってくれねえでしょうか?」 カルナ姫は、この男に嫌悪感を抱いた自分を恥じました。 (見た目はこんなだけど、きっと、心の綺麗な人に違いないわ。 道に迷ったことだし、この方のお母様にお会いして、その後、道案内をしてもらいましょう。) カルナ姫は慈愛に満ちた笑顔で、その男に語り掛けました。 「どうぞ、お顔をお上げになって下さいな。私でよろしければお母様にお会いいたしますわ。」 |
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「おお、なんとお優しい!ありがとうごぜえますだあ!!」 男はその醜い顔に満面の笑みを浮かべたつもりだったのでしょう。しかし、それは、醜い顔をさらに醜く歪めたに過ぎませんでした。 こうして、異形の男について行くことにしたカルナ姫。 カルナ姫は、狩り大会の日にまさか自分が狩られることになるとは夢にも思わなかったに違いありません。この醜い狩人は、狩場にいた時からずっと虎視眈々とカルナ姫を狙っていたのです。 狡猾で卑劣な狩人に狩られようとしている美しい獲物、カルナ姫。 道に迷っていた不安から開放され、心なしか足取りも軽やかに、醜い狩人の後について行きました。。。 |